人件費・採用

残業1時間の本当のコストは? 割増賃金と会社負担を分けて計算

残業1時間のコストを「時給×1.25」で見積もっている会社は少なくありません。実際には、1時間あたりの賃金額をどう出すかという入口の問題があり、その先に雇用保険・労災保険・一般拠出金という事業主負担があり、さらに4〜6月の残業だけは翌年8月まで社会保険料を押し上げます。このシミュレーターは、割増賃金の基礎から除外できる手当を実質で判定したうえで、月60時間超・法定休日・深夜を種類別に計算し、その月から効くコストと1年遅れて効くコストを分けて表示します。

無料・登録不要/2026-08-13 時点の公的データで計算

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計算方法の概要

  • 1か月平均所定労働時間 =(365日 − 年間所定休日日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12(うるう年は366日)
  • 算定基礎賃金 = 月の賃金総額 − 除外できる手当。除外できるのは法定の7項目だけで、判定は名称ではなく実質で行います。
  • 1時間あたりの賃金額 = 算定基礎賃金 ÷ 1か月平均所定労働時間
  • 法定時間外労働(月60時間以下)= 1時間あたりの賃金額 × 1.25。深夜と重なる時間は × 1.5。
  • 法定時間外労働(月60時間超の部分)= 1時間あたりの賃金額 × 1.5。深夜と重なる時間は × 1.75。
  • 法定休日労働 = 1時間あたりの賃金額 × 1.35。深夜と重なる時間は × 1.6。月60時間超の50%は適用されません。
  • 所定労働時間内の深夜労働 = 1時間あたりの賃金額 × 0.25。通常の労働時間の賃金は月給に含まれているため、追加負担は割増部分だけです。
  • 月60時間を超えたかどうかの判定に、法定休日に働いた時間は含めません。法定休日以外の休日に行った法定時間外労働は含めます。
  • 事業主の即時上乗せ = 割増賃金 ×(雇用保険の事業主負担率 + 労災保険率 + 一般拠出金率0.002%)。いずれも賃金総額に対して課され、残業代が増えればその月から増えます。
  • 4〜6月の遅行コスト = 定時決定で標準報酬月額が上がった分 ×(健康保険・介護保険・厚生年金・子ども子育て支援金の事業主折半分 + 子ども子育て拠出金)× 12か月

計算の前提条件

  • 月給制の労働者を前提としています。時給制・日給制・出来高払いでは1時間あたりの賃金額の算出方法が異なります。
  • 割増率はいずれも法定の下限です。就業規則や労働協約でこれを上回る率を定めている場合は、そちらが適用されます。
  • 「月の賃金総額」には、割増賃金(残業代・休日手当・深夜手当)を含めずに入力してください。手当は含めた総支給額です。
  • 1時間あたりの賃金額は端数処理せずに計算し、割増賃金の金額を表示するときに円未満を四捨五入しています(50銭未満切捨て・50銭以上切上げと同じ扱いです)。
  • 深夜と重なる法定時間外労働を「60時間以下」と「60時間超」のどちらへ割り当てるかを定めた公的な規定は確認できませんでした。本シミュレーターは月内で均等に発生したものとみなし、時間数の比率で按分しています。実際の発生時期によって金額は前後します。
  • 4〜6月の遅行コストは「この残業が4月・5月・6月の3か月とも同じように発生した場合」の試算です。実際の定時決定は、支払基礎日数17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)の月の報酬を平均して行います。
  • 標準報酬月額は健康保険50等級・厚生年金32等級の等級表で丸めているため、残業代の増加と保険料の増加は比例しません。
  • 労災保険率は率表の代表区分を当てはめた概算です。実際の率は事業の種類の細目で決まります。
  • 月45時間・年360時間という時間外労働の上限規制(労基法36条)は本シミュレーターの計算対象外です。金額が出ることは、その時間数まで働かせてよいことを意味しません。

使用料率・出典

よくあるご質問

残業1時間のコストは、時給の1.25倍で見ておけばよいですか?

足りません。割増賃金の1.25倍に加えて、雇用保険料の事業主負担分・労災保険料・石綿健康被害救済法の一般拠出金が、賃金総額に対してかかります。労働保険料の「賃金総額」には超過勤務手当・深夜手当・休日手当が明示的に含まれるため、残業代が増えればその月から自動的に増えます。率は業種によって変わり、一般の事業(その他サービス業など)では雇用保険の事業主負担0.85%+労災0.3%+一般拠出金0.002%で1.152%、建設の事業では1.05%+0.95%+0.002%で2.002%です。さらに大きいのは4〜6月に残業した場合で、定時決定を通じて標準報酬月額が上がると、健康保険・厚生年金などの事業主負担がその年の9月から翌年8月までの12か月間ずっと増えます。本シミュレーターはこの3層を分けて表示します。

1時間あたりの賃金額は、月給を何時間で割ればよいですか?

「1か月平均所定労働時間」で割ります。(365日 − 年間所定休日日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12 で求めます(うるう年は366日)。月によって所定労働時間が異なる場合に1年間の平均を使うことは、労働基準法施行規則19条1項4号に定められています。「1か月173時間」といった実態と乖離した固定の分母を使って単価を下げることはできません。年間所定休日が122日・1日8時間なら、(365−122)×8÷12=162時間が分母になります。

家族手当や通勤手当は、残業代の計算から必ず除外できますか?

できるとは限りません。除外できるのは、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金の7項目に限られ、判定は名称ではなく実質で行います。扶養家族の有無にかかわらず一律に支給される家族手当は、名称が家族手当でも算入が必要です。住宅手当も、家賃に定率を乗じるなど住宅費用に応じて算定されるものは除外できますが、「賃貸2万円・持家1万円」のように形態ごとに一律の額は除外できません。役職手当・資格手当・皆勤手当・業績手当・調整手当は、そもそもこの7項目に含まれないため必ず算入します。愛知労働局の資料は「これらは制限的に列挙されているものであり、これらに該当しない賃金は全て算入しなければなりません」と説明しています。

月60時間を超えたかどうかの判定に、休日の労働時間は含めますか?

法定休日(週1日または4週4日の休日)の労働時間は含めません。一方、法定休日以外の休日、いわゆる所定休日・法定外休日に行った法定時間外労働は含めます。厚生労働省の資料は「月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれませんが、それ以外の休日に行った労働時間は含まれます」と明示しています。また、所定労働時間を超えていても法定労働時間(1日8時間・週40時間)の範囲内であれば法定時間外にはあたらないため、60時間のカウントには入りません。あわせて、法定休日労働には月60時間超の50%という割増率は適用されず、深夜と重ならない限り1.35倍のままです。

残業時間の端数は、1日ごとに15分単位で切り捨ててよいですか?

できません。1日単位で15分未満・30分未満を切り捨てる運用は労働基準法違反です。認められているのは、1か月における時間外労働・休日労働・深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満を切り捨て30分以上を1時間に切り上げる処理だけです(昭和63年3月14日基発第150号)。これは「常に労働者の不利となるものではなく事務簡便を目的とする」ものという位置づけなので、切り上げを行わず切り捨てだけを行う運用も認められません。種類ごとに合計してから丸める点にもご注意ください。本シミュレーターでは端数処理を既定で無効にしています。

4〜6月の残業だけ社会保険料が上がると聞きましたが本当ですか?

標準報酬月額を通じて上がります。健康保険・厚生年金の保険料は標準報酬月額をもとに計算されるため、残業代が増えてもその月の保険料は変わりません。ただし毎年4月・5月・6月に支払った報酬をもとに定時決定(算定基礎届)が行われ、決まった標準報酬月額はその年の9月から翌年8月までの12か月間に適用されます。残業手当も報酬に含まれるため、4〜6月に残業が集中すると1年間分の保険料が上がります。一方、残業が増えただけでは随時改定(月額変更届)は行いません。随時改定は固定的賃金の変動が要件で、残業手当は非固定的賃金だからです。したがって4〜6月以外の残業が標準報酬月額を押し上げることはありません。

月60時間を超えた分の割増賃金は、休暇に代えられますか?

代替休暇の制度を設ければ、引上げ分(50%と25%の差にあたる部分)を有給の休暇に代えられます(労基法37条3項)。時間数は「(1か月の法定時間外労働時間数 − 60)× 換算率」で求め、換算率は法定下限どうしの差なら0.25です。法定時間外が70時間なら(70−60)×0.25=2.5時間となります。設けるには過半数労働組合(なければ過半数代表者)との書面による労使協定が必須で、あわせて就業規則にも「休暇」として規定する必要があります。労働基準監督署への届出は不要です。ただし協定は制度を可能にするだけで、取得するかどうか・取得日は労働者の意思によります。会社が取得を強制することはできません。免除されるのは引上げ分だけで、通常の労働時間の賃金と25%以上の割増賃金は必ず支払う必要があり、期間内に取得されなかった場合に支払義務が消滅することもありません。

残業させるのと人を増やすのと、どちらが安いですか?

本シミュレーターはこの比較を行いません。厚生労働省・中小企業庁・経済産業省の資料を確認しましたが、残業コストと新規雇用コストを比較して「どちらが安い」と結論づけた公的資料は確認できませんでした。民間で広く語られている経験則です。関連して確認できたのは、厚生労働省が労基法37条の趣旨を「使用者に対し経済的負担を課すことによって時間外労働を抑制することを目的とする」と説明している点だけで、これは立法趣旨であって費用の実証ではありません。判断に必要なのは、残業側の正確なコスト(本シミュレーター)と、採用側の正確なコスト(採用コストのシミュレーター)を、それぞれ自社の数字で出して並べることです。

PDFレポートには何が含まれますか?

画面では、1時間あたりの賃金額の算出過程、種類別の割増賃金、その月から連動する労働保険の事業主負担、残業1時間あたりの事業主コストをご覧いただけます。さらに詳細分析とPDFレポートでは、4〜6月に残業した場合の遅行コスト(標準報酬月額の等級移動と9月からの12か月分の増加額)、代替休暇の換算と免除額、法定時間外の時間数を変えた場合の限界コスト比較(60時間の境目が見える表)、除外判定を誤った場合の未払いリスク、社内説明や労務管理に使えるPDFレポートを提供します。

ご利用上の注意

  • 本シミュレーターの結果は概算です。実際の賃金計算では、就業規則・労働協約・労使協定の定めが優先されます。
  • 「残業代は時給の1.25倍」という理解では事業主の負担を過小に見積もることになります。これは公的に裏付けのある事実で、労働保険料は賃金総額に課され、賃金総額には超過勤務手当・深夜手当・休日手当が明示的に含まれます。
  • 一方、「残業させるほうが人を雇うより安い」という比較については、厚生労働省・中小企業庁・経済産業省の資料を確認しましたが、公的な裏付けを確認できませんでした。民間で広く語られている経験則です。本シミュレーターは残業側のコストだけを計算し、採用と比べてどちらが得かという判定は一切行いません。
  • 割増賃金の基礎から除外できるのは法定の7項目に限られ、判定は名称ではなく実質で行います。一律支給の家族手当・住宅手当を除外すると、1時間あたりの賃金額が実際より低くなり、割増賃金の不足につながります。個別の手当の判定に迷う場合は、労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。
  • 端数処理は「1か月における種類ごとの合計」に対してのみ認められています。1日単位で15分未満・30分未満を切り捨てる運用は労働基準法違反です。本シミュレーターの端数処理は既定で無効にしています。
  • 代替休暇を設けるには、過半数労働組合(なければ過半数代表者)との書面による労使協定と、就業規則への規定が必要です。制度があっても取得するかどうかは労働者の意思によります。
  • 時間外労働・休日労働をさせるには、労使協定(36協定)の締結と労働基準監督署への届出が必要です。上限規制(原則 月45時間・年360時間)にもご注意ください。
  • 個別の判断が必要な事項については、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。