人件費・採用

有給休暇の賃金はいくら払う? 3方式を同じ条件で比較

年次有給休暇を取った日に支払う賃金には、通常の賃金・平均賃金・標準報酬日額の3つの方式があります(労働基準法39条9項)。このシミュレーターは、同じ入力から3方式の日額と支払額を同時に計算して並べます。月給を「その月の所定労働日数」で割る点、平均賃金を労働日数ではなく暦日数で割る点、最低保障が効く賃金形態、標準報酬日額の10円単位の丸め、時間単位年休の1時間あたりの額まで含みます。なお、どの方式で支払うかはあらかじめ就業規則その他これに準ずるもので定めておく必要があり、取得のたびに有利な方を選ぶことはできません。この比較は、制度を設計・見直しするときの検討材料としてお使いください。

無料・登録不要/2026-08-13 時点の公的データで計算

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計算方法の概要

  • 通常の賃金(時給制)= 時給額 × その日の所定労働時間数
  • 通常の賃金(日給制)= 日給額そのもの
  • 通常の賃金(週給制)= 週給額 ÷ その週の所定労働日数
  • 通常の賃金(月給制)= 月給額 ÷ その月の所定労働日数。月20日などの固定値は使いません
  • 通常の賃金(出来高払制)= その期間の出来高賃金総額 ÷ 期間の総労働時間数 × 期間の1日平均所定労働時間数
  • 複数の賃金形態を併用している場合は、それぞれを算定して合計します(労基則25条1項7号)
  • 平均賃金 = 直前3か月間に支払った賃金の総額 ÷ その期間の総日数(暦日数)。分母は労働日数ではありません
  • 平均賃金の最低保障 = 賃金総額 ÷ その期間中に労働した日数 × 60/100。賃金が労働日・労働時間によって算定される場合と出来高払制に適用され、原則式と比べて高いほうを採ります
  • 賃金の一部が月給等で定められている場合は、その部分を暦日で割った額に、残りの部分の最低保障額を加えます。完全な月給制には最低保障を適用しません
  • 標準報酬日額 = 健康保険の標準報酬月額 ÷ 30。端数が5円未満なら切り捨て、5円以上10円未満なら10円に切り上げます。除数の30は固定で、その月の日数ではありません
  • 時間単位年休の1時間あたり = 各方式で算定した日額 ÷ その日の所定労働時間数(労基則25条2項・3項)
  • 端数処理は、平均賃金の日額を1銭未満切捨で確定し、取得日数を掛けてから1円未満を四捨五入します。先に円未満を丸めてから日数を掛けると1円ずれることがあります

計算の前提条件

  • 平均賃金の算定期間は、有給を与えた日の直前の賃金締切日から遡った3か月です。有給を2日以上連続で取得した場合は最初の日を基準にし、日ごとに計算し直しません。
  • 賃金総額は税や社会保険料を控除する前の総額です。時間外割増賃金・通勤手当・各種手当は算入します。
  • 賃金総額に算入しないのは、臨時に支払われた賃金・3か月を超える期間ごとに支払われる賃金・通貨以外で支払われた賃金の3つだけです(労基法12条4項)。
  • 控除できる期間は、業務上の傷病による休業・産前産後の休業・使用者の責めに帰すべき休業・育児介護休業・試用期間の5つです。私傷病欠勤や自己都合欠勤は含まれないため控除できません。
  • 標準報酬日額方式は、過半数労働組合(なければ過半数代表者)との書面による労使協定が要件です。協定がない場合はこの方式を選べません。
  • 通常の賃金の端数処理には法令上の定めがありません。本シミュレーターは平均賃金と同じ考え方で、日額を丸めずに日数を掛けてから1円未満を四捨五入しています。
  • 時間単位年休の1時間あたりの額の端数処理にも法令上の定めがありません。表示上は1円未満を四捨五入しています。
  • 所定労働時間数が0時間の日には年次有給休暇が成立しないため、時間単位年休の単価を算定していません。

使用料率・出典

  • 有給休暇中の賃金の3方式通常の賃金/平均賃金/標準報酬日額
    適用開始日: 1947-11-01/最終確認日: 2026-08-13
    本文で通常の賃金・平均賃金の2方式を、ただし書で標準報酬日額方式を定めています。標準報酬日額方式だけが労使協定を要件としており、条文は「これによらなければならない」と定めているため、協定を結んだ場合は会社の任意選択ではなくこの方式が適用されます。常時10人未満の事業場は就業規則の作成義務がないため、賃金規程や労働契約書などの「その他これに準ずるもの」で定めることになります。
  • その都度・従業員ごとに有利な方式を選ぶことはできません基発675号・基発168号
    適用開始日: 1952-09-20/最終確認日: 2026-08-13
    どの方式で支払うかは、あらかじめ就業規則その他これに準ずるもので定めておき、その定めた方法によらなければなりません。有給を取得するたびに、あるいは従業員ごとに、会社が有利な方を選ぶことは認められていません。3方式が用意されているのは手続簡素化の見地からであって、使用者の恣意的な選択を認める趣旨ではない、というのが行政解釈です。本シミュレーターの比較は、制度を設計・見直しするときの検討材料としてお使いください。
  • 平均賃金の算定と最低保障暦日数で除算/最低保障 60/100
    適用開始日: 1947-11-01/最終確認日: 2026-08-13
    同リーフレットの計算例:賃金総額896,320円 ÷ 90日 = 9,959.111… → 9,959.11円(1銭未満切捨)。最低保障 896,320円 ÷ 58日 × 60/100 = 9,272.275… → 9,272.27円。原則式が上回るため平均賃金は9,959.11円。19日分の支払額は9,959.11 × 19 = 189,223.09 → 189,223円(1円未満四捨五入)。
  • 標準報酬日額は10円単位に丸めます5円未満切捨・5円以上10円未満切上
    適用開始日: 2010-04-01/最終確認日: 2026-08-13
    時間単位年休の場合は、10円単位に丸めた後の標準報酬日額をその日の所定労働時間数で割ります。丸めは日額の段階で1回だけ行います。
  • 時間単位年休は、日額をその日の所定労働時間数で割ります日額 ÷ その日の所定労働時間数
    適用開始日: 2010-04-01/最終確認日: 2026-08-13
  • 「平均賃金方式にすれば会社は安く済む」は公的な基準ではありません公的な裏付けなし
    適用開始日: 1947-11-01/最終確認日: 2026-08-13
    逆転が起きることは公的資料に書かれているわけではなく、条文構造から導かれる帰結です。本シミュレーターは実際の入力値で計算して確認できるようにしています。

よくあるご質問

有給休暇の賃金は、3方式のうち安い方を選んでよいのですか?

選べません。どの方式で支払うかはあらかじめ就業規則その他これに準ずるもので定めておき、その定めた方法によらなければならないと解されています(昭和27年9月20日基発675号、平成11年3月31日基発168号)。有給を取得するたびに、あるいは従業員ごとに、会社が有利な方を選ぶことは認められていません。3方式が用意されているのは手続簡素化の見地からであって、使用者の恣意的な選択を認める趣旨ではない、というのが行政解釈です。本シミュレーターが3方式を並べているのは、制度を設計・見直しするときに、自社の賃金形態でどの方式がどれだけの額になるかを把握していただくためです。

平均賃金方式にすれば会社の負担は軽くなりますか?

一般化できません。厚生労働省・都道府県労働局の資料を確認しましたが、3方式のどれが高い・安いという比較は書かれていませんでした。民間で語られる経験則です。月給制では平均賃金の分母が暦日数(月あたり約30.4日)、通常の賃金の分母が所定労働日数(約20日)になるため、平均賃金のほうが低くなりやすいのは事実ですが、これは条文構造から容易に逆転します。たとえば時給・日給・出来高払制には平均賃金の最低保障(賃金総額 ÷ 労働日数 × 60/100)が適用され、この額はその日の所定労働時間数に連動しません。4時間シフトの日に有給を取れば、所定労働時間数に比例する通常の賃金のほうが小さくなります。また平均賃金の賃金総額には時間外割増賃金が全額算入されるため、残業が多い職場では平均賃金が通常の賃金を上回りえます。さらに詳細分析とPDFレポートでは、この3つの逆転条件がお使いの入力値で実際に成立しているかを計算して確認できます。

月給制の場合、月給を何日で割ればよいですか?

「その月の所定労働日数」で割ります(労基則25条1項4号)。年間の平均所定労働日数や「月20日」といった固定値ではありません。所定労働日数が21日の月と23日の月では1日単価が変わり、23日の月のほうが安くなります。この点が、月によって金額が変わらない平均賃金との大小関係が入れ替わる理由のひとつです。なお月給者については、有給を取得しても月給を減額せずそのまま支払えば、結果的に通常の賃金方式で支払ったことになります。実務ではこれが最も簡便です。

平均賃金は労働日数で割るのではないのですか?

原則は暦日数で割ります(労基法12条1項)。直前3か月間に支払った賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割ります。土日祝日も分母に含まれるため、労働日数で割るよりかなり小さい額になります。ただし賃金が労働日もしくは労働時間によって算定される場合、または出来高払制その他の請負制による場合は、「賃金総額 ÷ その期間中に労働した日数 × 60/100」を下回ってはならないという最低保障があります。この最低保障の分母だけが労働日数です。完全な月給制にはこの最低保障は適用されません。

標準報酬日額方式を使うには何が必要ですか?

過半数労働組合(なければ過半数代表者)との書面による労使協定が必須です(労基法39条9項ただし書)。通常の賃金・平均賃金の2方式は就業規則その他これに準ずるもので定めれば足りますが、標準報酬日額方式だけは労使協定が要件になっています。条文は協定で定めた場合には「これによらなければならない」としているため、協定を結んだ後は会社の任意選択ではなくこの方式が適用されます。金額は健康保険の標準報酬月額を30で割り、端数が5円未満なら切り捨て、5円以上10円未満なら10円に切り上げます。たとえば標準報酬月額26万円なら8,666.66…円となり、端数6.66円は5円以上なので8,670円です。除数の30は固定で、その月の日数ではありません。

時間単位年休の1時間あたりの賃金はどう計算しますか?

各方式で算定した日額を、その日の所定労働時間数で割ります(労基則25条2項・3項)。日単位の年休で使っている方式と同じ方式で算定します。標準報酬日額方式の場合は、10円単位に丸めた後の日額を所定労働時間数で割ります。丸めは日額の段階で1回だけ行い、時間あたりの額を再度10円単位に丸めることはしません。なお所定労働時間数が0時間の日には時間単位年休が成立しないため、計算できません。

平均賃金の計算で、控除できる期間と控除できない期間は何ですか?

賃金総額と日数の両方から控除できるのは5つだけです。業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業した期間、産前産後の女性が労基法65条により休業した期間、使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間、育児介護休業法に規定する育児休業・介護休業をした期間、試みの使用期間(試用期間)です。私傷病欠勤や自己都合欠勤はこの5つに含まれないため控除できません。欠勤が多い期間があると、賃金は減るのに暦日数は減らないため、平均賃金は下がります。また賃金総額に算入しないものは、臨時に支払われた賃金(結婚手当・私傷病手当・見舞金・退職金など)、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(年2回の賞与など)、通貨以外のもので支払われた賃金の3つです。時間外割増賃金と通勤手当はこの3つに含まれないため、算入します。

PDFレポートには何が含まれますか?

画面では、3方式それぞれの日額・取得日数分の支払額・時間単位年休の1時間あたりの額と、平均賃金の内訳(原則式と最低保障のどちらが適用されたか)をご覧いただけます。さらに詳細分析とPDFレポートでは、「平均賃金方式が安い」という通説の3つの逆転条件がお使いの入力値で実際に成立しているかの検証、その日の所定労働時間数を変えたときの各方式の動き、年間取得日数ごとの支払総額の比較、就業規則へ定める際の確認事項、社内説明や就業規則改定の検討資料に使えるPDFレポートを提供します。

ご利用上の注意

  • 本シミュレーターの結果は概算です。
  • その都度・従業員ごとに有利な方式を選ぶことはできません。どの方式で支払うかはあらかじめ就業規則その他これに準ずるもので定めておき、その定めた方法によらなければなりません(昭和27年9月20日基発675号、平成11年3月31日基発168号)。3方式が用意されているのは手続簡素化の見地からであって、使用者の恣意的な選択を認める趣旨ではない、というのが行政解釈です。
  • 「平均賃金方式にすれば会社は安く済む」という説には公的な裏付けがありません。厚生労働省・都道府県労働局の資料に3方式の有利不利の比較は記載されていません。本シミュレーターは金額と差額を並べますが、どの方式が有利かの判定は行いません。
  • 常時10人未満の事業場には就業規則の作成義務がないため、賃金規程や労働契約書などの「その他これに準ずるもの」で定めることになります。
  • 平均賃金の算定期間が3か月に満たない場合(雇入れ後3か月未満)や、日雇労働者など、本シミュレーターが扱っていない特例があります。該当する場合は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
  • 実際の制度設計・就業規則の改定にあたっては、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署にご相談ください。