税金・社会保険

昇給1万円で、会社の負担はいつからいくら増える?

「昇給すると4か月後に社会保険料が上がる」とよく言われますが、これは正確ではありません。保険料が変わるのは標準報酬月額が2等級以上動いたときだけで、そうでなければ次の定時決定(9月適用)まで変わりません。一方、雇用保険料と労災保険料は賃金総額に掛かるため、等級とは関係なく昇給した月から増えます。このシミュレーターは、昇給によって「何が」「いつから」「いくら」増えるのかを月単位で示します。

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計算方法の概要

  • 報酬月額 = 固定的賃金 + 残業手当などの非固定的賃金。これを等級表に当てはめたものが標準報酬月額です。
  • 健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・子ども子育て拠出金・支援金は、給与額ではなく標準報酬月額に対して計算されます。
  • 随時改定に該当するのは、固定的賃金が変動し、変動月以後3か月の平均報酬から算出した標準報酬月額が従前と2等級以上異なり、その3か月とも支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)である場合です。
  • 随時改定に該当する場合、改定は「変動後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目」から適用されます。
  • 該当しない場合は、次の定時決定(4〜6月の報酬で決定し9月から適用)で反映されます。6月以前の昇給ならその年の9月、7月以降の昇給なら翌年の9月です。
  • 雇用保険料・労災保険料は標準報酬月額ではなく実際に支払った賃金総額に率を掛けるため、昇給した月から即座に、昇給額に比例して増えます。
  • 賞与が基本給連動の場合、昇給額 × 賞与月数だけ賞与も増え、その分の保険料も増えます。
  • 平年度の負担増 =(賃金増 + 労働保険増 + 社会保険増)× 12 + 賞与分

計算の前提条件

  • 協会けんぽに加入する一般的な事業所を前提としています。健康保険組合は保険料率が異なるため対象外です。
  • 標準報酬月額の等級は健康保険の等級表を用い、厚生年金は上下限でクランプして扱っています。健康保険と厚生年金で等級が異なる場合があるため、判定は両方で行っています。
  • 随時改定の「2等級以上」の判定は、入力された昇給後の報酬月額がそのまま3か月続く前提で行っています。実際には変動月以後3か月の平均で判定するため、残業の増減によって結果が変わります。
  • 支払基礎日数の要件を満たすかどうかは、判断が分かれるため入力していただく形にしています。
  • 賞与は年2回等分支給の前提で標準賞与額を計算しています。
  • 昇給によって賞与が増える場合、その保険料も含めています。賞与が業績連動で昇給に連動しない場合は、賞与月数を0にしてください。
  • 労災保険率は業種の代表区分を当てはめた概算です。
  • 保険料の端数処理(事業所単位での1円未満切捨て等)は反映していません。

使用料率・出典

よくあるご質問

昇給したら、社会保険料はいつから上がりますか?

条件によって3通りに分かれます。第一に、標準報酬月額が2等級以上上がり、変動月以後3か月とも支払基礎日数の要件を満たせば、随時改定により変動後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目から上がります。第二に、そうでなければ次の定時決定まで変わらず、6月以前の昇給ならその年の9月、7月以降の昇給なら翌年の9月からになります。第三に、雇用保険料と労災保険料は等級と無関係に昇給した月から即座に増えます。

昇給1万円なのに、なぜ保険料は1万円分より多く増えるのですか?

保険料は給与額ではなく、等級表に当てはめた標準報酬月額に対して計算されるためです。たとえば報酬月額22万円の方が1万円昇給して23万円になると、標準報酬月額は22万円から24万円へ2万円上がることがあります。この場合、1万円の昇給に対して2万円分の保険料が増えます。逆に等級が変わらなければ保険料は1円も増えません。段差のある階段のような増え方をするのが特徴です。

残業が増えただけでも随時改定になりますか?

なりません。随時改定の起点になるのは固定的賃金の変動だけです。残業手当は非固定的賃金なので、時間数が増減しただけでは該当しません。ただし残業単価や割増率そのものを変更した場合は固定的賃金の変動にあたります。また基本給を上げても、同時に残業が減って3か月平均が下がり、増減の方向が一致しない場合は随時改定を行いません。

昇給する月はいつがよいですか?

会社負担の観点だけで言えば、随時改定に該当しない小幅な昇給では、7月以降に昇給すると社会保険料の反映が翌年9月まで先送りになります。6月昇給ならその年の9月から(3か月後)、7月昇給なら翌年の9月から(14か月後)と、1か月の違いで11か月も変わります。ただしこれは負担の発生時期がずれるだけで、総額が減るわけではありません。従業員の納得感や評価制度との整合を優先すべき論点です。

支払基礎日数とは何ですか?

給与計算の対象となる日数のことです。月給制・週給制では暦日数、日給制・時給制では出勤日数を数えます。欠勤控除がある月給制では、所定労働日数から欠勤日数を引いた日数になります。随時改定では、変動月以後3か月のいずれの月も17日以上(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)である必要があり、1か月でも下回れば随時改定は行いません。定時決定では17日未満の月を除いて計算するという別のルールがあり、混同しやすい点です。

パートを昇給させるときに注意することはありますか?

月額8.8万円のラインに注意してください。厚生年金保険の被保険者が常時51人以上の企業では、週の所定労働時間が20時間以上・所定内賃金が月額8.8万円以上などの要件を満たすと、短時間労働者も社会保険の被保険者になります。昇給によってこのラインを超えると、等級の変更どころではない大きさで会社負担が新たに発生します。なおこの賃金要件は2026年10月に撤廃される予定です(2026年8月時点では未施行)。

PDFレポートには何が含まれますか?

画面では、随時改定に該当するかの判定、社会保険料が変わる月、月ごとの負担増の推移、初年度と平年度の負担額、内訳をご覧いただけます。さらに詳細分析とPDFレポートでは、昇給額別の比較(等級の段差が見える表)、昇給月別の比較(初年度負担がどれだけ変わるか)、次の等級までの距離、随時改定の実務上の注意、パートの適用拡大の論点、社内説明に使えるPDFレポートを提供します。

ご利用上の注意

  • 本シミュレーターの結果は概算であり、実際の保険料額を保証するものではありません。
  • 「昇給すると4か月後に社会保険料が上がる」という言い方は正確ではありません。公的資料が定めているのは「随時改定に該当する場合に、変動後の報酬を初めて受けた月から起算して4か月目から改定する」ことです。2等級以上の差が生じなければ随時改定は行われません。
  • 「社会保険の会社負担は給与の約15%」という目安は、厚生労働省・日本年金機構・協会けんぽのいずれも公表していません。保険料は給与額ではなく標準報酬月額に対して計算されるため、給与額に一律の率を掛ける見積もりは実態からずれます。
  • 標準報酬月額の上限・下限にわたる等級変更は、1等級差でも随時改定の対象になります。該当しうる場合は結果画面で注意を表示しますが、具体的な組合せは事例集に定められているため、年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。
  • 実際の届出・判定にあたっては、必ず社会保険労務士または年金事務所にご相談ください。