利益改善

労働分配率は何%か。付加価値額の計算方法で答えが変わる

労働分配率は「人件費 ÷ 付加価値額」で求めます。難しいのは割り算ではなく、分母の付加価値額をどう計算するかです。控除法(売上高 − 外部購入価値)と加算法(経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課)では、同じ決算書から違う金額が出ます。統計も同じで、同じ「製造業」の労働分配率が、経済産業省の調査では45.9%、厚生労働省の白書では59.3%、中小企業庁の調査から導出すると65.8%になります。労働政策研究・研修機構にいたっては、同じ年の日本の労働分配率を6通りの計測方法で56.5%から81.1%まで公表しています。このシミュレーターは、自社の数字を複数の定義で計算し、複数の統計と並べて、その幅の中のどこにいるかをお示しします。「何%が適正か」の判定は行いません。

無料・登録不要/2026-08-13 時点の公的データで計算

入力フォームを読み込んでいます…

計算方法の概要

  • 労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値額 × 100
  • 付加価値額(控除法)= 売上高 − 外部購入価値。外部購入価値には材料費・仕入原価・外注加工費・購入部品費・運送費など、社外へ支払った分を入れます。
  • 付加価値額(加算法)= 経常利益 + 人件費 + 賃借料 + 減価償却費 + 金融費用 + 租税公課。付加価値が誰に配分されたかを積み上げる考え方です。
  • 人件費 = 役員報酬 + 給与手当 + 賞与 + 法定福利費 + 福利厚生費。どこまでを人件費に含めるかで労働分配率は動くため、内訳を分けて入力していただきます。
  • 従業者1人あたり付加価値額(労働生産性)= 付加価値額 ÷ 従業者数。労働分配率は「1人あたり人件費 ÷ 1人あたり付加価値額」と一致します。
  • 人件費率 = 人件費 ÷ 売上高 × 100。労働分配率とは分母が違う別の指標です。
  • 付加価値額が0以下のとき、労働分配率は計算しません。比率として意味を持たないためです。
  • 統計との比較は、産業別・資本金規模別(厚生労働省)と、対応する区分がある場合の経済産業省の値に対して、何ポイント上か下かだけを示します。良し悪しの判定は行いません。

計算の前提条件

  • 売上高・費用・利益はすべて同じ会計期間の金額を入力してください。
  • 従業者数には役員を含めてください。人件費に役員報酬を含めているため、分母と分子の範囲を揃える必要があります。パート・アルバイトが多い場合は、常用換算した人数のほうが実態に近くなります。
  • 外部購入価値にどこまでを含めるかによって、控除法の付加価値額は大きく動きます。含める範囲を決めて、期をまたいで同じ基準で測ってください。
  • 派遣社員への支払いは、会計上は人件費ではなく外注費・支払手数料として処理されることが一般的です。人件費に含めるかどうかで労働分配率は動きます。含める場合は前期以前も同じ扱いに揃えてください。
  • 厚生労働省・経済産業省の統計値は実績の平均であり、目標値ではありません。統計ごとに算式も調査対象も異なるため、水準をそのまま自社と比べることはできません。
  • 比較に用いる厚生労働省の値は2024年第Ⅳ四半期(後方4四半期移動平均)、経済産業省の値は2024年度実績です。時点が異なります。
  • 消費税は含めていません。税抜で統一してください。

使用料率・出典

  • 労働分配率(産業別・資本金規模別)産業別8区分/資本金規模別4区分
    適用開始日: 2025-09-30/最終確認日: 2026-08-13
    2024年第Ⅳ四半期(後方4四半期移動平均)の値です。資料は財務省「法人企業統計」にもとづき、労働分配率=人件費÷付加価値額、人件費=役員給与+役員賞与+従業員給与+従業員賞与+福利厚生費、付加価値額(四半期)=営業利益+人件費+減価償却額として算出しています。バックデータのExcelを取得して全数値を再計算し、一致することを確認しました。これは実績の平均であって、目標値ではありません。
  • 労働分配率(企業活動基本調査)合計・製造業・卸売業・小売業の4区分
    適用開始日: 2026-06-29/最終確認日: 2026-08-13
    労働分配率=給与総額÷付加価値額×100。付加価値額=営業利益+減価償却費+給与総額+福利厚生費+動産・不動産賃借料+租税公課。厚生労働省版と大きくずれるのは、①分子に福利厚生費を含まない(分母側にだけ入る)、②分母に賃借料と租税公課を含む、③調査対象が大企業寄り(一企業あたりの常時従業者数が507人)、の3点によります。公表されるのは合計・製造業・卸売業・小売業の4区分のみで、記述も前年度との増減にとどまり、水準の良否は述べていません。
  • 計測方法による労働分配率の違い2023年で56.5%〜81.1%(6通り)
    適用開始日: 2025-01-01/最終確認日: 2026-08-13
    最後の1つだけが法人企業統計(年報)にもとづく企業単位の労働分配率で、他は国民経済計算にもとづくマクロの値です。同じ国の同じ年でこれだけ動きます。
  • 人件費率の実務上の目安(労働分配率ではありません)飲食業FL60%/診療所 概ね前後50%/介護業60〜70%
    適用開始日: 2024-03-29/最終確認日: 2026-08-13
    同書は冒頭で「事業者支援の実務家の方々の知見・ノウハウを取りまとめたものであり、実務者の主観的な表現等を含みます」と自ら断っています。法令でも統計でもありません。作成主体も金融庁ではなく金融庁の委託を受けた日本生産性本部です。したがって「公的な基準です」とも「公的な基準はありません」とも書けません。「金融庁の委託調査が実務上の目安として挙げる数値です」が正確な書き方になります。

よくあるご質問

労働分配率は何%が適正ですか?

適正水準を示した公的資料は確認できていません。それ以前に、この問いは指標の性質上そのままでは成立しません。同じ「製造業」の労働分配率が、経済産業省『企業活動基本調査』では45.9%、厚生労働省『労働経済の分析』では59.3%、中小企業庁『中小企業実態基本調査』の構成項目から導出すると65.8%になります。分子に福利厚生費を含めるか、分母に減価償却費・賃借料・租税公課・支払利息を含めるか、対象企業の規模がどうかで、これだけ動きます。労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計2025』は、同じ2023年の日本の労働分配率を6通りの計測方法で56.5%から81.1%まで(24.6ポイント差)公表しています。つまり「50〜60%が目安」という言い方は、どの統計のどの算式を指しているのかが決まらない限り意味を持ちません。実務で意味があるのは、算式を1つ決めて、自社の期間比較を続けることです。本シミュレーターは自社の数字を5通りの定義で計算し、その幅もお示しします。

付加価値額は控除法と加算法のどちらで計算すべきですか?

どちらかが正しいというものではありません。控除法(売上高 − 外部購入価値)は「社外に支払った分を差し引いて、社内で新しく生んだ価値を求める」考え方、加算法(経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課)は「生んだ価値が誰に配分されたかを積み上げる」考え方です。理論上は同じ金額になるはずですが、実際には決算書の科目の切り分けが両者で一致しないため、必ずずれます。本シミュレーターは両方を計算して差額を表示します。差が大きい場合は、外部購入価値に含めた範囲を見直すと原因が見つかることが多いです。なお、控除法を「中小企業庁方式」、加算法を「日銀方式」と呼ぶ言い方が広く使われていますが、その呼称の出所となる公的資料は確認できていません。

労働分配率が業種平均より高いのですが、人件費を下げるべきですか?

その結論には直結しません。厚生労働省は『令和7年版 労働経済の分析』の脚注で、中小企業の労働分配率が高い理由を「人件費が多いから」ではなく「付加価値額が低いから」と明記しています。労働分配率は分数なので、平均より高いときの原因は(a)分子の人件費が大きい、(b)分母の付加価値額が小さい、の2通りあります。どちらなのかは、従業者1人あたりの付加価値額(労働生産性)を並べて見なければ分かりません。同じ資料の資本金規模別の値を見ると、資本金10億円以上が44.8%、1千万円以上1億円未満が74.6%と、規模が小さいほど労働分配率は高く出ます。これは中小企業が一律に人件費を使いすぎているという意味ではなく、1人あたりが生む付加価値額の差が現れたものです。業種平均だけと比べると、中小企業は構造的に「高い」と判定されてしまいます。さらに詳細分析とPDFレポートでは、差が分子と分母のどちらから来ているかを分解してお示しします。

人件費にはどこまで含めればよいですか?

統計によって範囲が違います。厚生労働省『労働経済の分析』が用いる法人企業統計ベースでは「役員給与+役員賞与+従業員給与+従業員賞与+福利厚生費」で、福利厚生費(法定福利費を含む)が入ります。一方、経済産業省『企業活動基本調査』の労働分配率は分子が給与総額のみで、福利厚生費は分母にだけ入ります。本シミュレーターは5項目(役員報酬・給与手当・賞与・法定福利費・福利厚生費)に分けて入力していただき、どの定義でどこまでが分子に入るのかを計算結果に表示します。派遣社員への支払いは会計上は外注費・支払手数料として処理されることが一般的で、人件費に含めると労働分配率は上がります。含める・含めないのどちらでも構いませんが、期をまたいで基準を変えないことが重要です。

人件費率の目安はありますか? 労働分配率とは違うのですか?

違う指標で、扱いも違います。労働分配率は分母が付加価値額、人件費率は分母が売上高です。そして労働分配率には公的な目安が見当たらない一方、人件費率には実務上の目安が実在します。金融庁『業種別支援の着眼点』(作成は金融庁の委託を受けた日本生産性本部)には、飲食業でFL比率(材料費+人件費)60%・その他経費30%・営業利益10%という売上構成、診療所の人件費率は概ね前後50%、介護業は60〜70%という記述があります。ただし同書は冒頭で「事業者支援の実務家の方々の知見・ノウハウを取りまとめたものであり、実務者の主観的な表現等を含みます」と自ら断っており、法令でも統計でもありません。同じ資料の全10業種を検索しても「労働分配率」は0件で、「人件費率」は医療編に6件、介護編に3件、「FL比率」は飲食編に2件あります。実務の目安が与えられているのは売上高に対する割合のほうだ、ということです。なお飲食業のFL比率は材料費との合計なので、人件費率だけを60%と比べることはできません。

赤字の期に労働分配率が跳ね上がったのですが、異常ですか?

正常な動きです。厚生労働省は「労働分配率は景気局面で機械的に上下する(好況で低下・不況で上昇)」「企業の利益が減少した場合、企業は利益の減少割合ほど従業員や役員の給料等を減少させないことから労働分配率が上昇する」と明記しています。加算法では経常利益が分母に入るため、赤字になると付加価値額そのものが縮み、人件費が変わらなくても労働分配率は上がります。赤字幅が大きいと付加価値額が0以下になることもあり、その場合は比率として意味を持たないため本シミュレーターは算定しません。単年の水準ではなく、複数期の推移で見てください。

PDFレポートには何が含まれますか?

画面では、控除法と加算法それぞれの付加価値額、労働分配率、従業者1人あたり付加価値額(労働生産性)、人件費率、そして産業別・資本金規模別の平均との位置関係をご覧いただけます。さらに詳細分析とPDFレポートでは、5通りの企業単位の定義(控除法・加算法・厚生労働省・経済産業省・JILPTの法人企業統計ベース)で自社を計算した幅、JILPTが公表する6通りの計測方法との対照、産業別8区分・資本金規模別4区分・経済産業省の同時プロット、平均との差が分子(人件費)と分母(付加価値額)のどちらから来ているかの分解、人件費率と金融庁の委託調査が挙げる実務目安との対照、社内説明や金融機関提出に使えるPDFレポートを提供します。

ご利用上の注意

  • 本シミュレーターの結果は概算です。
  • 労働分配率の適正水準を示した公的資料は確認できていません。厚生労働省『令和7年版 労働経済の分析』の本文に「労働分配率」は30回登場しますが、「適正」「目安」として水準を示している箇所はありません。経済産業省『企業活動基本調査』の記述は前年度との増減のみ、中小企業庁『中小企業実態基本調査』には語自体が0件、金融庁『業種別支援の着眼点』の全10業種でも0件でした。そのため本シミュレーターは、適正値による判定も、段階を切ったスコアリングも行いません。
  • 厚生労働省は同白書の脚注で、中小企業の労働分配率が高い理由を「人件費が多いから」ではなく「付加価値額が低いから」と説明しています。労働分配率が平均より高いことは、人件費の使いすぎを意味しません。
  • 同白書は「統計により付加価値の水準もトレンドも異なるため単一の値として扱えない」「景気局面で機械的に上下する(好況で低下・不況で上昇)」とも明記しています。一定の幅を持ってご覧ください。
  • 控除法を「中小企業庁方式」、加算法を「日銀方式」と呼ぶ言い方が実務で広く使われていますが、その呼称の出所となる公的資料は確認できていません。本シミュレーターは呼称ではなく算式そのものを画面に表示します。
  • 人件費率(売上高に対する割合)については、金融庁の委託調査『業種別支援の着眼点』に実務上の目安が実在します(飲食業のFL比率60%、診療所の概ね前後50%、介護業の60〜70%)。ただし同書は「実務家の知見・ノウハウで主観的な表現を含む」と自ら断っており、法令でも統計でもありません。作成主体も金融庁ではなく日本生産性本部です。
  • 実際の経営判断や賃金の決定にあたっては、顧問税理士・中小企業診断士・社会保険労務士にご相談ください。