税金・社会保険
経営セーフティ共済は得か? 「節税」ではなく課税の繰延べを数字で見る
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の掛金は、全額を損金または必要経費にできます。これは租税特別措置法に明文がある事実です。一方で「だから節税になる」という結論は、公的資料には見当たりません。掛金を払った期に所得が減り、解約手当金を受け取った期に所得が戻るため、制度の本質は課税の繰延べです。このシミュレーターは「節税額」を表示しません。支出時に減る税額、解約した年に戻ってくる課税所得、40か月未満で解約した場合の元本の欠損を、それぞれ分けてお示しします。
無料・登録不要/2026-08-13 時点の公的データで計算
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計算方法の概要
- 掛金総額 = 掛金月額 × 掛金納付月数(掛金総額が800万円に達すると、それ以降は払い込めません)
- 支出時に減る税額 = 掛金総額 × 掛金を支出する期の実効税率
- 解約手当金 = 掛金総額 × 支給率(掛金納付月数と解約の区分で決まります)
- 支給率は中小企業倒産防止共済法施行令4条の区分表そのものです。任意解約は40か月以上で100%、みなし解約は36か月以上で100%、機構解約は40か月以上でも95%が上限です。
- 掛金納付月数が12か月未満のときは、解約の区分にかかわらず解約手当金は支給されません(法11条1項)。
- 解約時に増える税額 = 解約手当金 × 解約手当金を受け取る期の実効税率
- 元本の欠損 = 掛金総額 − 解約手当金 = 掛金総額 ×(1 − 支給率)
- 通算の純効果 = 支出時に減る税額 − 解約時に増える税額 − 元本の欠損。加入しなかった場合と比べた現金の差にあたります(時間価値は考慮していません)。
- 支給率100%で、支出時と解約時の実効税率が同じであれば、通算の純効果はゼロになります。これが「繰延べであって節税ではない」ことの数字上の意味です。
- 「解除の日から2年を経過する日」は民法143条2項にしたがい、解除の日を起算日として2年後の応当日の前日としています。応当する日がない場合はその月の末日です。
計算の前提条件
- 掛金月額は加入期間を通じて一定であるものとしています。増額・減額や掛止めは含めていません。
- 掛金総額が800万円(掛金納付制限額)に達すると、それ以降は掛金を払い込めません。払い込まない月は掛金納付月数に積み上がらないため、支給率もそこで止まる前提で計算しています。
- 掛金月額で800万円を割り切れない場合は、上限を超えない範囲までを払い込むものとし、端数の調整は行っていません。
- 実効税率は加入期間を通じて一定であるものとしています。実際には所得金額や制度改正で変動します。
- 所得800万円以下の部分に適用される軽減税率、欠損金の繰越控除、外形標準課税などは反映していません。実効税率の入力欄でご調整ください。
- 個人事業主の場合、解約手当金は事業所得の総収入金額になります。累進税率のため「解約時の実効税率」は受取年の所得水準で大きく変わります。国民健康保険料や個人事業税への影響も含まれていません。
- 共済金の借入れによって掛金の権利が消滅した場合、掛金納付月数(したがって支給率)は変わらないものとし、支給率をかける掛金総額が減る形で計算しています。
- 前納減額金の税務上の取扱い(雑収入とするか掛金の減額とするか)については、公的資料での明示的な記述を確認できなかったため、通算の純効果には含めていません。
- 資金を手元に置くことで得られる運用益や、繰延べによる資金繰りの改善効果は金額に含めていません。
使用料率・出典
- 掛金の上限・下限・掛金納付制限額月額5,000〜200,000円/総額800万円適用開始日: 2020-04-01/最終確認日: 2026-08-13掛金月額20万円・掛金総額800万円という数字は法文に直接は書かれていません。施行令2条の8,000万円 →その10分の1が掛金納付制限額800万円 →その40分の1が掛金月額の上限20万円、という導出です。掛金は分割納付できません(法14条2項)。増額の申込みは機構が承諾しなければなりませんが、減額には施行規則9条が定める理由(事業規模の縮小、経営の著しい悪化・疾病・危急の費用による継続困難、限度額到達)が必要です。
- 解約手当金の支給率任意40か月100% / みなし36か月100% / 機構95%止まり適用開始日: 2011-10-01/最終確認日: 2026-08-13掛金納付月数が12か月未満の場合、解約の区分にかかわらず解約手当金は支給されません(法11条1項)。前納した掛金は、充当する月が到来していない分は掛金納付月数に算入されず、掛金総額にも含まれません(法15条2項)。なお偽りその他不正の行為による機構解除の場合は、納付月数にかかわらず解約手当金は支給されません(法11条2項)。
- 掛金の損金・必要経費算入全額(明細書の添付が要件)適用開始日: 1978-04-01/最終確認日: 2026-08-13損金経理は要件ではありません。費用処理しても、資産計上して申告調整しても構いませんが、いずれの場合も明細書の添付は必須です。適用期限(サンセット)の定めは条文上ありません。
- 解約手当金の課税法人=益金/個人=事業所得の収入金額適用開始日: 1978-04-01/最終確認日: 2026-08-13解約手当金の支給を受ける権利は、行使できる時から5年で時効消滅します(法19条)。
- 解除後2年間の損金不算入(令和6年10月改正)解除の日から2年を経過する日まで適用開始日: 2024-10-01/最終確認日: 2026-08-13所得税法等の一部を改正する法律(令和6年法律第8号)による改正。改正法附則53により、令和6年10月1日以後の共済契約の解除について適用されます。共済制度そのもの(加入条件・支給率など)は変わっていません。
- 共済金の借入れ無利子/借入額の10分の1の掛金の権利が消滅適用開始日: 2011-10-01/最終確認日: 2026-08-13償還期間は6か月の据置期間を含み、5,000万円未満は5年、5,000万円以上6,500万円未満は6年、6,500万円以上8,000万円以下は7年です(施行令3条)。50万円と月間総取引額の20%のいずれにも達しない請求はできません。
- 前納減額金掛金月額 × 0.9/1000 × 前納月数の累計適用開始日: 2017-11-01/最終確認日: 2026-08-13率は平成29年11月1日に千分の5から千分の0.9へ改正されています。前納減額金そのものの税務上の取扱い(雑収入とするか掛金の減額とするか)については、公的資料での明示的な記述を確認できませんでした。
- 「全額損金だから節税」という説明の検証公的資料に「節税」の語はありません適用開始日: 1978-04-01/最終確認日: 2026-08-13同ページに「節税」の語はありません。「確定申告の際、掛金を損金(法人の場合)、または事業所得の必要経費(個人事業主の場合)に算入できます」と書かれています。
- 実効税率の初期値29.74%(入力で変更できます)適用開始日: 2018-04-01/最終確認日: 2026-08-12地方税は標準税率、大法人向け事業税所得割を前提とした数値です。所得800万円以下の部分に軽減税率が適用される中小法人や、欠損法人では実際の負担率は下がります。あくまで目安としてご覧ください。
よくあるご質問
経営セーフティ共済は節税になりますか?
掛金を全額損金・必要経費にできることは、租税特別措置法66条の11第1項第2号(法人)と28条第1項第2号(個人事業主)に明文があります。ただし「だから節税になる」という結論は公的資料に見当たりません。制度の本質は課税の繰延べです。掛金を払った期に所得が減り、解約手当金を受け取った期に所得が戻るため、40か月以上納付して支給率100%で解約した場合、生涯を通じた課税所得の総額は掛金を払わなかった場合と一致します。変わるのは所得の計上時期だけです。負担が実際に軽くなるのは、解約手当金を受け取る期の税率が掛金を支払った期より低いとき(欠損金がある期、役員退職金を支給する期など)と、繰り延べた資金を運用や資金繰りに充てられるときです。本シミュレーターは「解約時の実効税率」を入力していただき、どこが分岐点になるかを税率で表示します。
40か月の壁とは何ですか? 何か月で解約すれば元本割れしませんか?
解約手当金の支給率は掛金納付月数と解約の区分で決まります(中小企業倒産防止共済法施行令4条)。自分の意思で解約する任意解約の場合、12か月以上24か月未満が80%、24か月以上30か月未満が85%、30か月以上36か月未満が90%、36か月以上40か月未満が95%、40か月以上で100%です。つまり任意解約で元本割れしなくなるのは40か月からで、これが「40か月の壁」と呼ばれています。ただし壁の位置は解約の区分で動きます。個人事業主の死亡、法人の解散、事業の全部譲渡などによるみなし解約は36か月で100%に達します。逆に12か月分以上の掛金を滞納した場合などの機構解約では、40か月以上納付しても95%が上限で、100%にはなりません。12か月未満はどの区分でも支給されず、全額が掛け捨てになります。
掛金の上限はいくらですか? 800万円に達したらどうなりますか?
掛金月額は5,000円から200,000円までの5,000円単位、掛金総額は800万円が上限です(掛金納付制限額)。800万円に達すると、それ以降は掛金を払い込めません。払い込まない月は掛金納付月数に積み上がらないため、支給率もそこで止まります。掛金月額200,000円で加入した場合、ちょうど40か月で800万円に達し、同時に任意解約の支給率も100%に到達します。なお掛金月額の40倍に達すると掛止めができるようになります。掛金の増額の申込みは機構が承諾する必要があり、減額には施行規則9条が定める理由(事業規模の縮小、経営の著しい悪化や疾病などによる継続困難、限度額への到達)が必要です。
個人事業主でも同じように考えてよいですか?
掛金を必要経費にできる点は同じですが、出口の扱いが決定的に違います。解約手当金は事業所得の総収入金額になり、退職所得でも一時所得でもありません。租税特別措置法に受取側の非課税規定や分離課税の規定はありません。事業所得なので、受け取った年の所得が大きく跳ね上がり、累進税率だけでなく国民健康保険料や個人事業税の算定基礎にも影響しえます。共済金が退職所得等として扱われる小規模企業共済とは、ここが違います。また掛金は所得控除ではなく事業所得の必要経費なので、確定申告書の所得控除欄には記入しません。不動産所得のみの方は対象外です。本シミュレーターで個人事業主を選ぶと、この点の注意を結果に併記します。
解約してすぐ再加入すれば、また繰延べを続けられますか?
令和6年10月1日以後に共済契約を解除した場合、解除の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は、損金にも必要経費にもできません(措法66条の11第2項・28条第2項)。掛金を払えなくなるわけではなく、払えるけれども資産に計上することになります。資産計上した掛金は、解約手当金を受け取ったときに取り崩します。この「解除」には、自分の意思による任意解約だけでなく、機構による解除とみなし解約も含まれます(財務省『令和6年度 税制改正の解説』注1)。注意が必要なのは、判定が事業年度ではなく「解除の日から2年を経過する日」という日付で行われる点です。事業年度の途中で取扱いが切り替わります。詳細分析では解除日を入力していただき、2年を経過する日を日付でお示しします。
共済金を無利子で借りられるのは有利ではないのですか?
取引先が倒産したとき、回収困難となった売掛金債権等の額と掛金総額の10倍に相当する額(最高8,000万円)のいずれか少ない額の範囲内で、無担保・無保証人・無利子で借りられます。ただし借り入れると、借入額の10分の1に相当する額が納付済みの掛金から差し引かれ、その掛金の権利が消滅します。1,000万円を借りると100万円分の掛金の権利がなくなるため、実質的な調達コストは借入元本の10%です。無利子という言葉だけで判断できるものではありません。また取引先の「夜逃げ」は制度上の倒産にあたらず、法的整理の申立て、手形交換所(電子交換所)の取引停止処分、弁護士等による支払停止通知などが対象です。償還期日までに償還しない場合は年14.6%の違約金がかかります。
前納すると得ですか?
前納すると前納減額金が受け取れます。金額は「掛金月額 × 0.9 ÷ 1000 × 前納月数の累計」です。掛金月額20万円で12か月分をまとめて納めた場合、前納月数の累計は0+1+…+11=66となり、前納減額金は11,880円です。前納額240万円に対して0.495%にあたります。毎年3月末時点で計算し、預かっている前納減額金の合計が5,000円以上になった年の6月に振り込まれ、5,000円未満の年は繰り越されます。注意点は、制度上の上限と税務上の上限が一致しないことです。共済制度としては800万円の枠まで前納できますが、税務上は前納期間が1年以内の部分しか当期の損金・必要経費になりません(措置法通達66の11-3/28-3)。1年を超える部分は当期の損金にならないため、決算対策として12か月を超えて前納しても当期の効果は増えません。
PDFレポートには何が含まれますか?
画面では、掛金総額・支給率・解約手当金・支出時に減る税額・解約時に増える税額・元本の欠損・通算の純効果と、通算がマイナスにならない解約時の税率の上限をご覧いただけます。さらに詳細分析とPDFレポートでは、掛金納付月数を12か月から60か月まで振ったときの支給率と通算純効果の一覧、解約区分ごとの支給率の対照表(40か月の壁が一目で分かります)、解除日から2年を経過する日の日付計算、共済金を借り入れた場合に消滅する掛金と解約手当金への影響、前納減額金と税務上損金にできる範囲の計算、社内説明や税理士との相談に使えるPDFレポートを提供します。
ご利用上の注意
- 本シミュレーターの結果は概算です。実際の税額は他の所得や控除、事業年度の状況によって変わります。
- 「掛金が全額損金になる」ことは租税特別措置法66条の11・28条に明文があります。一方「だから節税になる」という結論は公的資料に見当たりません。中小機構は小規模企業共済については「節税しながら」と書いていますが、経営セーフティ共済のページでは一貫して「掛金を損金、または必要経費に算入できる」としか書いておらず、「節税」の語を使っていません。
- 掛金の損金算入・必要経費算入には、確定申告書への明細書の添付が要件です(措法66条の11第3項・28条第3項)。添付がないと適用を受けられません。
- 支給率は法令の区分表そのものであり、本シミュレーターが目安として設定した数値ではありません。ただし偽りその他不正の行為による機構解除の場合は、納付月数にかかわらず解約手当金は支給されません(法11条2項)。
- 令和6年10月1日以後に共済契約を解除した場合、解除の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金は損金にも必要経費にもできません。この「解除」には任意解約だけでなく機構解約とみなし解約も含まれます。判定は事業年度ではなく日付で行われるため、事業年度の途中で取扱いが切り替わります。
- 個人事業主の解約手当金は事業所得の総収入金額であり、退職所得でも一時所得でもありません。共済金が退職所得等として扱われる小規模企業共済とは、この点が決定的に違います。
- 加入資格(引き続き1年以上事業を行っている中小企業者であること等)や、業種ごとの資本金・従業員数の要件は判定していません。加入前に中小機構の資料でご確認ください。
- 実際の加入・解約の判断、決算期をまたぐ処理、役員退職金との組み合わせなどは、顧問税理士にご相談ください。