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設備投資、即時償却と税額控除はどちらが得?
中小企業経営強化税制では、即時償却と税額控除のどちらかを選びます。即時償却は「1,000万円が全額経費になる」ため一見お得に見えますが、これは損金算入の時期を前倒しするだけで、耐用年数を通じた損金の総額は変わりません。一方、税額控除は法人税額そのものを減らす恒久的な減税です。このシミュレーターは両者を現在価値で比較し、法人税額の20%という上限や赤字の場合まで含めて判定します。
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計算方法の概要
- 即時償却 = 初年度に取得価額の全額を損金算入する。以後の償却はない。
- 税額控除 = 減価償却は通常どおり行い、取得価額に控除率(資本金3,000万円以下は10%、3,000万円超1億円以下は7%)を掛けた額を法人税額から直接差し引く。
- 特別償却30%(中小企業投資促進税制)= 初年度に通常の償却に加えて取得価額の30%を上乗せして損金算入する。
- 税軽減額 = 損金算入額 × 法人実効税率 + 税額控除額
- 現在価値 = 各年の税軽減額を割引率で現在価値に割り引いて合計したもの
- 償却累積額の限度は「取得価額 − 1円」と定められているため、初年度に多く償却すればその分だけ後年度に償却できる額が減り、損金の総額は選択によらず同じになります。
- 税額控除には調整前法人税額の20%という上限があり、控除しきれない額は翌事業年度以後1年以内に開始する事業年度へ繰り越せます。繰越先でも上限は同じで、控除しきれなければ失効します。
- 定率法は200%定率法として計算し、定率法による額が残存年数での均等償却額を下回った年から均等償却へ切り替えています。
計算の前提条件
- 金額はすべて税抜です。
- 経営力向上計画の認定や工業会等の証明書など、制度を使うための手続要件は満たしている前提です。取得価額の要件だけを判定しています。
- 翌期の調整前法人税額は当期と同額と仮定して、税額控除の繰越を計算しています。
- 法人実効税率は各期を通じて一定と仮定しています。税率が変わる場合や、所得800万円以下の軽減税率のラインをまたぐ場合は結果が変わります。
- 償却率は耐用年数省令の別表に定められていますが、本試算は定額法を「取得価額 ÷ 耐用年数」、定率法を「定額法償却率の2倍」として仕組みを再現した概算です。実際の償却額とは端数程度の差が生じます。
- 事業年度の途中で取得した場合の月割り計算は行っていません。取得した事業年度から満額の償却ができる前提です。
- 資産を耐用年数の途中で除却・売却する場合は含めていません。
- 地方税への波及の違い(特別償却は法人事業税にも効くが税額控除は効かない)は反映していません。
使用料率・出典
- 中小企業経営強化税制即時償却 or 税額控除10%/7%(適用期限 2027-03-31)適用開始日: 2017-04-01/最終確認日: 2026-08-12租税特別措置法第42条の12の4。適用期限は令和9年3月31日で、令和8年度税制改正での延長はありません。工具・器具備品の取得価額要件は令和8年4月1日以後に取得等をするものから40万円以上(改正前30万円以上)になりました。
- 中小企業投資促進税制特別償却30% or 税額控除7%(適用期限 2027-03-31)適用開始日: 1998-06-01/最終確認日: 2026-08-12租税特別措置法第42条の6。適用期限は令和9年3月31日で、令和8年度税制改正での延長はありません。建物・建物附属設備・構築物・器具備品は対象外である点が経営強化税制との最大の違いです。税額控除は資本金3,000万円以下の法人に限られ、3,000万円超1億円以下は特別償却30%のみです。
- 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例40万円未満・年300万円まで(適用期限 2029-03-31)適用開始日: 2026-04-01/最終確認日: 2026-08-12租税特別措置法第67条の5。令和8年度税制改正で取得価額の上限が30万円未満から40万円未満へ引き上げられ、適用期限が令和11年3月31日まで3年延長されました。従業員数要件も500人以下から400人以下へ引き下げられています。適用は取得日で判定し、令和8年4月1日前に取得したものは従前どおり30万円未満です。年間の合計限度額300万円は据え置きです。
- 償却累積額の限度(即時償却が繰延べである根拠)取得価額 − 1円適用開始日: 2007-04-01/最終確認日: 2026-08-12第61条第1項第2号イにより、平成19年4月1日以後に取得した有形減価償却資産の償却累積額の限度は取得価額から1円を控除した金額とされています。
- 法人実効税率(既定値)29.74%適用開始日: 2018-04-01/最終確認日: 2026-08-12地方税は標準税率、大法人向け事業税所得割を前提とした数値です。所得800万円以下の部分に軽減税率が適用される中小法人や、欠損法人では実際の負担率は下がります。あくまで目安としてご覧ください。
よくあるご質問
即時償却と税額控除、どちらが得ですか?
利益が出ている会社では、多くの場合は税額控除の方が得です。即時償却は損金算入の時期を前倒しするだけで、耐用年数を通じた損金の総額は変わりません。得になるのは税負担が先送りされることによる資金繰りの効果と時間価値の分だけです。一方、税額控除は法人税額そのものを減らす恒久的な減税です。ただし税額控除には調整前法人税額の20%という上限があり、利益が小さい会社や赤字の会社では控除しきれず失効することがあります。その場合は即時償却の方が有利になります。
1,000万円が全額経費になるのに、なぜ減税ではないのですか?
償却累積額の限度が「取得価額 − 1円」と定められているためです。初年度に1,000万円を全額償却すれば、その後の年度で償却できる額はゼロになります。7年で償却する場合と比べて、初年度の損金は大きくなりますが、2年目以降の損金がその分小さくなり、7年間の合計では同じです。動くのはタイミングだけです。
それなら即時償却を選ぶ意味はないのですか?
あります。第一に、税金の支払いが先送りされるとその分の資金を手元に置けます。設備投資の直後は資金が減っているため、この効果は小さくありません。第二に、赤字や利益が小さくて税額控除を使いきれない場合は、即時償却の方が有利になります。第三に、来期以降に大きな利益が見込まれる場合、当期に損金を寄せる意味は薄くなります。本シミュレーターは割引率を入力していただき、この時間価値を金額で比較します。
税額控除の20%上限とは何ですか?
中小企業経営強化税制と中小企業投資促進税制の税額控除額の合計は、調整前法人税額の20%までしか使えません。たとえば法人税額が200万円なら、控除できるのは40万円までです。控除しきれなかった額は翌事業年度以後1年以内に開始する事業年度へ繰り越せますが、繰越先でも上限は同じ20%で、そこでも控除しきれなければ失効します。賃上げ促進税制や研究開発税制と併用する場合は、租税特別措置の税額控除の合計が調整前法人税額の90%を超える部分も控除できません。
赤字の場合はどうなりますか?
調整前法人税額が0なら、税額控除の額も0になります。繰越しても翌期に法人税額がなければ失効します。この場合、即時償却を選んで欠損金を増やし、将来の黒字と相殺する方が現実的です。ただし繰越欠損金の控除限度や繰戻し還付の可否は別の論点になるため、顧問税理士にご相談ください。
少額の設備はどう扱えばよいですか?
取得価額によって4つの区分があります。10万円未満または使用可能期間1年未満なら全額を損金算入できます。20万円未満なら一括償却資産として3年で均等償却でき、償却資産税の対象外になる利点があります。40万円未満なら中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額を損金算入できます(年間合計300万円まで)。この40万円という金額は令和8年度税制改正で30万円未満から引き上げられたもので、令和8年4月1日以後に取得したものに適用されます。
制度の適用期限はいつまでですか?
中小企業経営強化税制と中小企業投資促進税制は、いずれも令和9年3月31日までです。令和8年度税制改正では延長されませんでした。取得だけでなく、その期限までに事業の用に供する必要があります。少額減価償却資産の特例は令和11年3月31日まで3年延長されています。
PDFレポートには何が含まれますか?
画面では、適用できる制度の判定、即時償却と税額控除の現在価値比較、どちらが有利かの判定、年度別の税軽減額をご覧いただけます。さらに詳細分析とPDFレポートでは、割引率別の比較、法人税額別の比較(どこから税額控除が有利になるかの境目)、制度の要件(設備類型・投資利益率7%)、税額控除の上限と繰越の詳細、地方税への波及、社内説明や税理士との相談に使えるPDFレポートを提供します。
ご利用上の注意
- 本シミュレーターの結果は概算であり、税務上の取扱いを保証するものではありません。
- 即時償却は減税ではなく、損金算入の時期を前倒しするものです。ただし税率が変わる場合、繰越欠損金の使用に制約がある場合、資産を途中で除却・売却する場合には税額の総額も変わりうるため、「必ず同じ」と断定はできません。
- 中小企業経営強化税制と中小企業投資促進税制の適用期限は、いずれも令和9年3月31日です。令和8年度税制改正での延長はありませんでした。取得だけでなく事業供用も期限内に必要です。
- 令和8年度税制改正により、令和8年4月1日以後に取得する工具・器具備品の取得価額要件が30万円以上から40万円以上に引き上げられました。少額減価償却資産の特例も30万円未満から40万円未満に引き上げられています。取得日で判定が変わります。
- 「中小企業経営強化税制B類型は投資利益率5%以上」という説明を見かけますが、現在は7%以上です。5%は中小企業等経営強化法の一般規定の値で、税制の対象となる設備は7%以上とされています。
- 実際の適用にあたっては、必ず顧問税理士にご相談ください。