投資・出店
この出店、何年で回収できる? 投資回収期間と撤退ライン
出店投資の回収期間は「投資額 ÷ 月次のキャッシュフロー」で求まります。難しいのは割り算ではなく、割る相手を何にするかです。減価償却費は現金の支出を伴わないため足し戻す必要がありますが、ここを取り違えて税引後利益のまま割ると、回収期間は実際より長く出ます。このシミュレーターは両方を並べて差を示し、返還される保証金を除いた実質の投資額、立ち上がりを考慮した累積キャッシュフローの推移まで計算します。なお「回収期間3年以内が目安」といった数値基準は公的な資料に見当たらないため、判定には使いません。
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計算方法の概要
- 総投資額 = 内外装工事費 + 設備・什器 + 保証金 + 礼金等 + その他の初期費用
- 実質の投資額 = 総投資額 − 返還される保証金。返還される保証金は預けた資産であり、投資ではありません。
- 減価償却費(月額)= 減価償却の対象額 ÷ 耐用年数 ÷ 12ヶ月(定額法での概算)
- 月次の営業利益 = 月商 × 粗利率 − 月次固定費 − 減価償却費
- 月次のキャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費。減価償却費は現金の支出を伴わないため、ここで足し戻します。
- 回収期間(月)= 実質の投資額 ÷ 月次のキャッシュフロー
- 営業利益がゼロになる月商 =(月次固定費 + 減価償却費)÷ 粗利率
- 現金の増減がゼロになる月商 = 月次固定費 ÷ 粗利率。減価償却費を含めないため、必ず前者より低くなります。
- 投資利益率 = 年間営業利益 ÷ 総投資額
- 立ち上がりは、初月の達成率から想定売上に到達する月まで直線で上げています。各月のキャッシュフローを積み上げ、累積が実質の投資額に達した月を回収月としています。
- 月次キャッシュフローが0以下の場合、投資は回収されないため回収期間を算定しません。
計算の前提条件
- 金額はすべて税抜です。
- 月次固定費には減価償却費を含めないでください。減価償却は別の入力欄で扱っています。二重に計上すると利益が過小になります。
- 回収期間の計算には、支払利息も元本返済も含めていません。投資そのものの評価と、資金調達の評価を分けるためです。借入の返済まで含めた手元資金の推移は、詳細分析で別に計算しています。
- 減価償却は定額法での概算です。実際には内外装(建物附属設備)と設備・什器で耐用年数が異なり、定率法を選べる資産もあります。まとめて1つの耐用年数で計算しています。
- 税は営業利益がプラスの月にだけ発生させています。実際には事業年度で通算されるため、立ち上がり期に赤字がある場合、本試算より税負担は軽くなる(回収は早まる)方向になります。
- 返還される保証金は、契約終了時に戻る前提で実質の投資額から除いています。原状回復費用が差し引かれる場合は、その分を撤退にかかる費用に含めてください。
- 売上は立ち上がった後は一定として計算しています。季節変動、家賃や人件費の改定、修繕・設備の入替えは含めていません。
- 月次推移は開業から120ヶ月(10年)まで計算しています。この期間内に累積が実質の投資額に届かない場合は、回収月を算定しません。
使用料率・出典
- 回収期間法・投資利益率法の定義(数値基準は存在しない)投資額 ÷ キャッシュフローの平均値適用開始日: 2026-08-13/最終確認日: 2026-08-13回収期間法は「投資額を、投資によって得られるキャッシュフローの平均値で割って、投資資金の回収期間を算出する」方法、投資利益率法は「投資によって得られる増加利益を投資額で割って、利益率を算出する方法」と説明されています。割る相手が利益ではなくキャッシュフローである点が要点です。同ページに「○年以内が目安」といった数値基準は示されていません。ページに公開日・最終更新日の記載がないため、適用開始日には確認日を記載しています。
- 減価償却が取得価額の期間配分であることの根拠償却累積額の限度 = 取得価額 − 1円適用開始日: 2007-04-01/最終確認日: 2026-08-12第61条第1項第2号イにより、平成19年4月1日以後に取得した有形減価償却資産の償却累積額の限度は取得価額から1円を控除した金額とされています。
- 中小企業経営強化税制(投資利益率は税制の要件)B類型 年平均の投資利益率7%以上適用開始日: 2017-04-01/最終確認日: 2026-08-12租税特別措置法第42条の12の4。適用期限は令和9年3月31日で、令和8年度税制改正での延長はありません。工具・器具備品の取得価額要件は令和8年4月1日以後に取得等をするものから40万円以上(改正前30万円以上)になりました。
- 法人実効税率(既定値)29.74%適用開始日: 2018-04-01/最終確認日: 2026-08-12地方税は標準税率、大法人向け事業税所得割を前提とした数値です。所得800万円以下の部分に軽減税率が適用される中小法人や、欠損法人では実際の負担率は下がります。あくまで目安としてご覧ください。
- 返還される保証金が費用にならないことの根拠繰延資産は原則5年償却適用開始日: 2007-04-01/最終確認日: 2026-08-12法人税法施行令第14条第1項第6号ロ・第64条第1項第2号・第134条、法人税基本通達8-1-5・8-2-3、消費税法基本通達5-4-3。個人事業主も所得税法施行令第7条第1項第3号ロに同趣旨の規定があります。
- 開業費用と資金調達額(参考値)開業費用 平均975万円/中央値600万円適用開始日: 2025-12-05/最終確認日: 2026-08-12回収2,165社・回収率25.4%。開業費用の総額と分布、資金調達額は公表されていますが、物件取得費・内装工事費などの費目別内訳を集計した公的統計は確認できませんでした。中小機構J-Net21の業種別開業ガイドには費目の分類とモデル数値がありますが、統計ではありません。
よくあるご質問
投資回収期間は何年以内なら大丈夫ですか?
公的な基準は見当たりませんでした。中小企業基盤整備機構は回収期間法を「投資額をキャッシュフローの平均値で割る」方法として説明していますが、何年以内が望ましいかには触れていません。広く言われている「3年以内」「5年以内」は民間の経験則です。適切な期間は、賃貸借契約の期間、借入の返済期間、設備の耐用年数によって変わります。本シミュレーターは回収に必要な月数を計算したうえで、入力いただいた返済期間・耐用年数と並べてお示しします。回収期間が返済期間より長い場合、返済の後半は事業以外の資金で賄う必要があるという事実は、判定ではなく定義から導かれます。
なぜ減価償却費を足し戻すのですか?
減価償却費は、すでに支払った取得価額を耐用年数にわたって費用として配分したものだからです。償却する各年度に現金が出ていくわけではありません。回収期間は現金がいつ戻るかを見るものなので、キャッシュフロー(税引後利益 + 減価償却費)で割ります。既定の条件では、月次の税引後利益は約24.6万円、減価償却費は15万円です。総投資額2,300万円を税引後利益で割ると93.5ヶ月かかるように見えますが、減価償却費を足し戻したキャッシュフロー約39.6万円で割ると58.1ヶ月です。同じ投資で35ヶ月の差が出ます。中小機構の説明も「キャッシュフローの平均値で割る」となっており、利益で割るのは誤りです。
保証金は投資額に含めるべきですか?
支出としては含めますが、回収の対象からは外すのが実態に合います。返還される保証金・敷金は契約終了時に戻ってくる資産であり、税務上も支出した時点では費用になりません。戻ってくるものを事業のキャッシュフローで回収し直す必要はないためです。本シミュレーターは、総投資額と、返還される保証金を除いた実質の投資額の両方で回収期間を計算します。ただし原状回復費用が保証金から差し引かれる契約も多いため、その分は撤退にかかる費用として入力してください。
営業利益が赤字なのに現金が減っていないことがあるのはなぜですか?
減価償却費の分だけ、会計上の赤字と現金の減少にずれが生じるためです。営業利益がゼロになる月商は「(固定費 + 減価償却費)÷ 粗利率」ですが、現金の増減がゼロになる月商は「固定費 ÷ 粗利率」で、必ず低くなります。既定の条件では、営業利益がゼロになるのは計画の90%、現金の増減がゼロになるのは計画の85.7%です。この間の売上では、決算書は赤字ですが現金は減っていません。逆に減価償却が終わると、利益は増えるのにキャッシュフローは「減価償却費 × 実効税率」の分だけ減ります。
立ち上がり期間はどう入力すればよいですか?
想定した月商に到達するまでの月数と、開業した最初の月の達成率を入力してください。その間は直線的に上がるものとして計算します。飲食店では開業直後に一時的な混雑があり、その後いったん落ちてから固定客がついていくという動き方をすることもありますが、本シミュレーターは単純な直線で近似しています。立ち上がりの見込みが分からない場合は、立ち上がり期間を1ヶ月にすると初月から想定どおりの売上として計算します。その場合の回収月は、定常状態の計算を切り上げた月と一致します。
回収期間と借入の返済期間はどう関係しますか?
回収期間が返済期間より長い場合、返済が終わっても投資はまだ戻りきっていないことになります。これは判定ではなく、2つの期間を並べれば分かる事実です。また回収期間の計算には元本返済を含めていません。元本の返済は費用ではなく借入金という負債の減少であり、投資が生む収益力とは別の話だからです。毎月の現金が回るかどうかは別の問題なので、詳細分析では支払利息と元本返済まで差し引いた手元資金の推移を月次で計算し、立ち上がり期に不足する最大額もお示ししています。
撤退はどう判断すればよいですか?
すでに支払った内外装工事費や設備費は、続けても撤退しても戻りません。これを取り戻そうとして判断すると、損失をかえって広げることがあります。比べるべきは「このまま続けた場合にこれから出ていく現金」と「撤退にかかる費用から返還される保証金を差し引いた純額」です。本シミュレーターは、月次のキャッシュフローがマイナスの場合に、撤退の純コストと同額の現金を失うまでの月数を計算します。ただしこれは何ヶ月で撤退すべきかという基準ではありません。売上が計画に届かない原因が立ち上がりの遅れなのか想定そのものの誤りなのかで判断は変わります。
PDFレポートには何が含まれますか?
画面では、実質の投資額、3通りの回収期間、投資利益率、営業利益と現金それぞれの分岐点、立ち上がりを考慮した累積キャッシュフローの推移と回収月をご覧いただけます。さらに詳細分析とPDFレポートでは、売上が計画の50〜120%だった場合の回収期間、借入の返済まで含めた月次の手元資金推移と立ち上がり期に必要な運転資金、撤退判断で何と何を比べるかの整理、減価償却が終わった後の損益とキャッシュフローの変化、金融機関への融資相談や社内説明に使えるPDFレポートを提供します。
ご利用上の注意
- 本シミュレーターの結果は概算であり、税務上の取扱いを保証するものではありません。
- 「投資回収期間は3年以内が目安」「5年以内なら合格」といった数値基準は、中小企業庁・中小企業基盤整備機構・日本政策金融公庫・経済産業省のいずれの資料にも見当たりませんでした。中小機構が示しているのは回収期間の算式だけで、何年以内という水準には触れていません。民間の経験則です。本シミュレーターは回収期間の良し悪しを判定せず、回収に必要な月数と、利用者が入力した借入の返済期間・減価償却の耐用年数との前後関係だけをお示しします。
- 中小企業経営強化税制B類型の投資利益率7%以上という要件は実在しますが、これは税制の対象となる設備を選別するための要件であり、投資の可否を判断する基準ではありません。同税制の投資利益率は投資計画による増加額をもとに複数年度の平均で算定し、分母を設備投資額とするもので、本シミュレーターの「年間営業利益 ÷ 総投資額」とは算定の範囲が異なります。数値をそのまま比較しないでください。
- 撤退の判断には、契約上の制約、従業員の処遇、取引先との関係、リース資産の残債など、金額に表れない論点が伴います。本シミュレーターが示すのは現金の動きだけです。
- 実際の出店判断・撤退判断にあたっては、顧問税理士や中小企業診断士にご相談ください。