EC・販売
10%値引き、何個多く売れば元が取れる?
「10%値引きしても、その分たくさん売れれば同じでしょう」。この感覚は、ほとんどの場合ずれています。値引きは売価から引かれますが、原価は変わりません。減るのは利益だけで、しかも増やした分の数量も薄くなった利益でしか売れないからです。粗利率40%の商品を10%値引きすると、必要な数量は33.3%増。よく使われる「値引率÷粗利率」という簡便式では25%増となり、これでは足りません。このシミュレーターは、自社の原価・値引き率・クーポン利用率から、必要な数量と売上を計算します。
無料・登録不要/2026-08-13 時点の公的データで計算
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計算方法の概要
- 1個あたりの限界利益 = 通常売価 − 原価 − その他変動費(送料・決済手数料など)
- 限界利益率 = 1個あたりの限界利益 ÷ 通常売価。以下ではこれを m と書きます。粗利率ではなく、この率が計算の分母になります。
- 値引き率 = 値引き額 ÷ 通常売価。以下では d と書きます。
- 値引き後の1個あたり限界利益 = 通常売価 ×(m − d)。値引き分は利益からそのまま減ります。
- 同じ利益総額を得るのに必要な数量の比 = m ÷(m − d)
- したがって、必要な販売数量の増加率 = m ÷(m − d)− 1 = d ÷(m − d)
- 広く出回っている「値引率 ÷ 粗利率」(= d ÷ m)は誤りです。増えた分の数量も値引き後の薄い利益でしか売れないため、分母から値引き率を引かなければなりません。
- 必要売上高 = 必要販売数 × 値引き後の平均売価。値引きで単価が下がるため、必要な売上の増加率は数量の増加率より小さくなります。
- 限界利益がゼロになる限界値引き率 = m。定義上、限界利益率そのものと一致します。ここに達すると、何個売っても利益は増えません。
- クーポンの場合、値引きが効くのは使われた分だけです。実効値引き率 = 値引き率 × クーポン利用率(償還率)として計算しています。
- 値引き率が限界利益率以上の場合、値引き後の1個あたり利益が0以下になり、何個売っても元の利益に届きません。この場合は必要数量を算定しません。
計算の前提条件
- 金額はすべて税抜で扱っています。売価・原価・値引き額・送料のいずれも税抜で入力してください。
- 値引きしても原価とその他変動費は変わらないものとしています。仕入ロットを増やして原価が下がる効果は含めていません。
- 販売数を増やしても、1個あたりの原価・変動費は変わらないものとしています。
- 固定費(家賃・人件費など)は数量が変わっても増減しないものとして、計算から除いています。増えた数量に追加の人手や設備が必要な場合、必要数量はここで出る数より多くなります。
- 値引きによって実際に何個増えるかは、この試算には含まれていません。「何個増えれば元が取れるか」という条件だけをお示しします。
- クーポン利用率(償還率)は、販売数のうち値引き価格で売れる割合として扱っています。全品値引きセールであれば100%です。
- 値引きで既存の顧客が値引き価格に流れる分(本来定価で買っていた人が値引きで買う分)は、利用率に含めてお考えください。
- 想定販売数は月間として扱い、年間の影響は12倍で計算しています。季節変動は織り込んでいません。
使用料率・出典
- 二重価格表示・割引率の表示についての考え方不当景品類及び不当表示防止法 第5条第2号適用開始日: 2016-04-01/最終確認日: 2026-08-13平成12年6月30日公正取引委員会。平成14年・平成18年の改定を経て、平成28年4月1日に消費者庁が改定しています。二重価格表示・割引率の表示についての考え方を示したものです。
- クーポン・ポイントの取扱い(値引と認められる経済上の利益)景品類等の指定の告示 第1項第2号適用開始日: 2024-04-18/最終確認日: 2026-08-13昭和52年4月1日事務局長通達第7号。令和6年4月18日消費者庁長官決定により改正され、同日から施行されています。第6項が「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」の考え方を示しています。
- 値引き率の水準(公的な基準は存在しない)利用者が入力適用開始日: 2016-04-01/最終確認日: 2026-08-13同ガイドラインは価格表示の適否についての考え方を示すもので、値引き率の上限や適正水準を定めたものではありません。国や公的機関が値引き率の目安を示した資料は確認できませんでした。適切な値引き率は原価構造で変わるため、ご自身の数字から判断してください。
よくあるご質問
10%値引きしたら、何個多く売れば元が取れますか?
限界利益率によって変わります。限界利益率が40%なら33.3%増、30%なら50%増、20%なら100%増、つまり販売数を2倍にする必要があります。式は「値引率 ÷(限界利益率 − 値引率)」です。限界利益率が低い商品ほど、同じ10%引きでも必要な数量は跳ね上がります。ご自身の数字を入力してご確認ください。
「値引率 ÷ 粗利率」で計算してはいけないのですか?
いけません。この式は、増やした分の数量にも値引き前の利益が乗ると誤って想定しています。実際には、増やした分も値引き後の薄い利益でしか売れません。粗利率40%・値引き10%の場合、この式では25%増となりますが、25%増やしても利益は元に戻りません。売価3,000円・限界利益1,200円・月1,000個の例では、正しくは1,334個必要なところ1,250個で止まってしまい、75,000円足りません。正しい式は分母から値引き率を引いた「値引率 ÷(粗利率 − 値引率)」です。
粗利率と限界利益率は何が違うのですか?
粗利率は売価から原価だけを引いた率、限界利益率は原価に加えて「1個売れるごとに増える費用」も引いた率です。送料・決済手数料・同梱物・出荷作業費などが後者にあたります。値引きの計算では限界利益率を使わなければなりません。粗利率で計算すると分母が大きくなり、必要な数量を実際より少なく見積もることになります。既定値の例では粗利率43.3%に対して限界利益率は40%で、この差が必要数量を数%動かします。
何%まで値引きしてよいのですか?
公的な基準は見当たりませんでした。ただし、定義から必ず言えることが一つあります。値引き率が限界利益率に達すると、1個あたりの利益はゼロになります。これが限界値引き率です。限界利益率40%の商品なら40%引きがその線で、それを超えると売れば売るほど損失が増えます。またその手前でも、値引き率が限界利益率に近づくほど必要な数量は急激に増えます。限界利益率40%の商品では、10%引きで33%増、30%引きでは300%増、35%引きでは700%増が必要です。
クーポンの利用率(償還率)はどう考えればよいですか?
配ったクーポンのうち、実際に使われる割合です。使われなければ値引きは発生しないため、実効的な値引き率は「値引き率 × 利用率」になります。利用率は事前に読めないことが多いので、本シミュレーターでは単一の予測値を置かず、利用率を0%から100%まで振った感応度表をお示ししています。全品値引きセールであれば利用率は100%です。なお、もともと定価で買うつもりだった顧客がクーポンを使う分も、利用率に含めてお考えください。
値引き・ポイント付与・送料無料では、どれが有利ですか?
顧客から見た還元額をそろえると、自社の負担は手段によって変わります。値引きは適用された瞬間に全額が負担になります。ポイント付与は使われた分だけが負担になるため、利用率が低いほど自社負担は小さくなります。送料無料は還元額が送料の実費で固定されるため、売価が高い商品ほど値引き率換算では小さくなります。さらに詳細分析とPDFレポートでは、この3手段を同じ還元額で並べ、必要な数量の増加率まで比較します。なお本試算は損益の概算で、自社ポイントの会計処理(収益の繰延べなど)は扱っていません。
「通常価格○○円のところ△△円」と表示してもよいですか?
過去の販売価格を比較対照価格として並べる表示については、消費者庁が価格表示に関する考え方を示しています。同一の商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格であることが必要とされており、一定期間の販売実績が求められます。該当するかどうかは、販売していた時期と期間、その商品の価格変動の状況、販売形態などを考慮して個々の事案ごとに検討されるとされています。またセールの実施を決めた後に販売を開始した商品については、期間を正確に表示しても不当表示に該当するおそれがあるとされています。具体的な期間の考え方は消費者庁の価格表示に関する考え方をご確認ください。
PDFレポートには何が含まれますか?
画面では、値引き後の1個あたり利益、必要な販売数量の増加率と必要売上高、限界値引き率、数量据え置きの場合の差額、クーポン利用率を振った感応度表をご覧いただけます。さらに詳細分析とPDFレポートでは、値引き率×限界利益率のクロス感応度マトリクス、値引き・ポイント付与・送料無料の3手段の比較、クーポン利用率3シナリオでの年間影響、二重価格表示や割引率表示に関する公的な整理、社内説明に使えるPDFレポートを提供します。
ご利用上の注意
- 本シミュレーターの結果は概算であり、税務上の取扱いや法令適合を保証するものではありません。
- 「値引きは何%までなら安全」といった水準について、国や公的機関が基準を示した資料は確認できませんでした。適切な値引き率は商品ごとの原価構造で変わります。本シミュレーターはしきい値による判定を行わず、限界値引き率(=限界利益率)という定義上必ず正しい線と、必要な数量だけをお示しします。
- 「必要売上増加率 = 値引率 ÷ 粗利率」という簡便式は誤りです。これは公的基準の当否ではなく算数の問題で、正しくは「値引率 ÷(粗利率 − 値引率)」です。本シミュレーターでは両方の数字を並べ、差額もお示しします。
- セール時に「通常価格○○円のところ△△円」のように過去の価格と並べる表示(二重価格表示)については、消費者庁が価格表示に関する考え方を示しています。比較対照価格として用いるには、同一の商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格であることが必要とされており、一定期間の販売実績が求められます。該当するかどうかは個々の事案ごとに検討されるとされていますので、具体的な期間の考え方は消費者庁の価格表示に関する考え方をご確認ください。
- セール直前に表示価格をいったん引き上げてから割引率を表示することや、対象が一部に限られているのに「全品○割引」と強調することは、不当表示に該当するおそれがあるとされています。
- 本シミュレーターは値引きの損益を計算するもので、景品規制や表示規制への該当性を判定するものではありません。実際の販促企画にあたっては、顧問税理士や表示に詳しい専門家にご相談ください。